研究概要 |
1. 白血病細胞でのWT1の発現は、aberrant overexpressionである ヒトの骨髄細胞及び臍帯血細胞から、FACSソーティングにより、CD34^+CD38^<+/->,CD34^+CD33^<+/->,CD34^+HLA-DR^<+/->などの造血幹細胞分画を分離し、WT1発現レベルを測定したところ,どの細胞分画でも、WT1発現レベルは、白血病細胞でのWT1発現レベルの1/10以下であり、白血病細胞と同程度にWT1を発現する細胞分画を検出できなかった。このことは、白血病細胞では、WT1がaberrant overexpressionしていることを示唆した。 2. WTlは、造血幹細胞では、oncogenicな機能を果たす (1) WT1遺伝子をmyeloid progenitor cell lineである32D細胞に導入し、WT1をconstitutiveに発現させると、32D細胞は、G-CSFの刺激に対して、分化をを起こさなくなり、逆に、増殖をはじめた(WT1を発現していない32D細胞は、G-CSFの刺激で、完全に好中球にまで分化する)。この時、Stat3αとstat3βの両者の活性化が見られた。 (2) WT1遺伝子を、レトロウイルスベクターを用いて、マウスの骨髄細胞に導入し、G-CSFの存在下で、コロニーアッセイを行ったところ、コントロールに比し、有意により多くのCFU-G,CFU-M,及びCFU-GMコロニーが形成された。 (1)(2)の結果は、WT1は、造血幹細胞では、癌抑制遺伝子というよりも、むしろ、がん遺伝子様の機能を果たしていることを示した。
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