研究概要 |
本研究では、はじめにセルソーターを用いて骨髄、末梢血、臍帯血由来の幹細胞を高度に純化し、各幹細胞分画の表面抗原、サイトカイン受容体、さらにいgp130の発現レベルについてマルチカラー解析を行なった。その結果、gp130はほぼubiquitousに発現していたが、c-kit,fit3,IL-3R、IL-6R,commonβなどの発現レベルには幹細胞の起源により大きな差が認められた。そこで末梢血、臍帯血よりCD34^+IL-6R^<+or->細胞を分離し、IL-6あるいはsolubleIL-6 receptor(sIL-6R)を用いてgp130のシグナルを活性化した。これまでの検討により、gp130を介するシグナル単独では幹細胞に対して有意な作用を示さないが、これらの3つのシグナルを同時に活性化することにより劇的な強調作用が認められ、G-CSF,Epo,TPOなどの細胞系列特異的因子非依存性に3系統の成熟血球を誘導できること見い出した。以上の実験より、(1)IL-3Rを介するシグナルが幹細胞の生存や初期の増殖に必須であること、(2)SCFはIL-3の存在下における幹細胞の増殖を促進すること、(3)gp130を介するシグナルは主に成熟因子として作用することなどが明らかとなった。さらに、commonβを介するシグナルの活性化にGM-CSF,IL-5を用いたところ、IL-3とは量的にも質的にも異なる結果が得られた。このことは標的細胞上の受容体の発現パターンだけでなく、細胞内のシグナル伝達やクロストークが一様でないことを意味している。そこでG-CSF,Epo,TPOなどの細胞系列特異的因子のシグナル伝達に関与するJAK2,およびその下流のSTAT5に注目し、各々のアンチセンスDNA分子を合成し、シグナルの協調作用に対する影響について詳細に検討している。今後、PU.1,GATA-1,NF-E2などの細胞系列特異的な転写因子についても検討し、JAK-STAT系を介するシグナル伝達とMAPキナーゼカスケードとのクロスストークを明らかにするとともに、キ-シグナルの探索を行う予定である。
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