研究概要 |
急性巨核芽球性白血病患者の骨髄血から、インターロイキン-3、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポエチン(EPO)に増殖依存症を示す細胞株の樹立に成功し、UT-7と命名した。(Cancer Res. 51:341,1991)。さらにUT-7からEPOにのみ増殖依存症を示す亜株UT-7/EPO(Blood 82: 456, 1993)、EPO刺激による赤血球系へ、TPO刺激により巨核球系へと2方向への分化能を有するきわめてユニークな細胞株UT-7/GMを樹立した(Blood 89:4021, 1997)。本研究ではこれらの細胞株を用いて、以下の事を明らかにした。(1)UT-7およびその亜株を用いて、EPOがSTAT1aとSTAT3を活性化すること(JBC 272:] 16507, 1997)、これらのSTATの活性化がEPOによる赤芽球分化を抑制することを明らかにした(Blood 92: 462, 1998)。そこで細胞外領域をG-CSF受容体、細胞内領域をEPO受容体にしたキメラ受容体、さらにC末端から徐々に削った変異体を作製し、これらを内因性G-CSF受容体を発現していないUT-7/EPO細胞に遺伝子導入した。細胞内領域のBox2からC末側にSTAT1aとSTAT3の活性化に重要な領域が存在すること、これらの活性化にはc-FesとJak2チロシンキナーゼが重要な役割を演じていることが分かった(投稿準備中)(2)STAT3がTPOによる巨核球分化に対しても抑制的に機能することを見出した(投稿準備中)(3)EPOとTPOシグナル伝達経路にはクロストークが存在し、TPOによる赤芽球分化はJAK2チロシンキナーゼを介したEPO受容体の活性化が必須であることが明らかになった(投稿準備中)(4)MAPキナーゼの活性化がEPOによる赤芽球に抑制的に作用することが分かった(Int Hematol印刷中)。(5)臨床検体を用いて、GATA-1やEPO受容体が赤白血病に高発現していること、GATA-1が電顕的血小板ペルオキシダーゼ(PPO)の発現誘発に重要であることを見出した(Exp Helatol 26 1148, 1998)。(6)STAT3のin vivoにおける役割を解析する目的で、赤芽球・巨核球に特異的に発現するGATA-1のプロモーターにSTAT3 dominant negagtive型を連結させたconstructを用いてtransgenic miceを作製した。その結果、マウスは正常に生まれ、恒常的造血には異常はなかったが、抗癌剤投与後の骨髄抑制からの赤血球・血小板の回復に著しい遅延が認められた。このことからSTAT3はin vivoにおける赤芽球・巨核球系前駆細胞の増幅に重要な役割を果たしていることがわかった(投稿準備中)。(7)線虫の寿命に関与するDaf16のヒトホモログであるFKHRL1がエリスロポエチンシグナル伝達の下流に存在することを明らかにした(Blood 印刷中)。
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