研究概要 |
ラットの糸球体に特異的に発現している遺伝子を探索し、既に塩基配列が遺伝子バンクに登録されている遺伝子;olfactomedin-related protein,thymosin β4,haparin-binding epidermal growth factor,VE-cadherin,βCOP,collagen type IV α3 chain遺伝子と新規の糸球体特異的発現遺伝子;14-1,17-3を単離した。それら単離した遺伝子のうち翻訳される蛋白質の機能が分かっていないものについてその機能を検討した。そのうちの一つ、olfactomedin-related proteinは糸球体上皮細胞と神経細胞のゴルジ装置に特異的に存在することを免疫組織学、Westernblot法で明らかにし、その蛋白質のC末端のSDEL配列がゴルジ装置停留シグナルであることを明らかにした。CHO細胞にこの蛋白を過剰発現させ、その形態学的な変化を検討したが、顕著な形態学的な変化は認められなかったことから、この分子は細胞形態に直接関与するものでは無いこと、Two-hybrid法でそれと結合する分子を探索したが、その分子は検出できなかったことから、トランスジェニックマウスやノックアウトマウスを作製して、その機能を解析する必要があると考えられた。新規の糸球体特異的発現遺伝子14-2、17-3はその遺伝子の全長cDNAを現在クローニング中である。また、既知の遺伝子で糸球体特異的発現遺伝子として単離されたもののうち、thymosin β4は糸球体上皮細胞に強く発現していることを免疫組織化学法で確認し、そのアクチン結合能から糸球体上皮細胞の収縮、弛緩などがこの細胞の機能に重要であることが想定された。セクレチン受容体ファミリーに属する糖蛋白を翻訳する新規遺伝子が単離され、その推定アミノ酸配列よりその蛋白は2個の免疫グロブリン様構造を持つ膜7回貫通蛋白であることからIg-Heptaと名付けられた。この糖蛋白は腎と肺に多く、腎では集合管の介在細胞と肺では肺胞上皮に局在することから酸―塩基バランスの調節に関係していることが示唆された。
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