研究課題/領域番号 |
09470245
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 英昭 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (30134555)
|
研究分担者 |
古川 聡 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
韓 一秀 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
井上 知巳 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
|
キーワード | 好中球 / アポトーシス / ネクローシス / 感染 / サイトカイン / 活性酸素 / 成長ホルモン / CD16 |
研究概要 |
本研究は、炎症・感染における好中球細胞死とその炎症遷延・臓器障害発生における役割の詳細を明らかにし、さらに重症感染や重症炎症での好中球のネクローシス防止、アポトシス誘導、寿命延長などの対策を開発することを目的とする。本年度は、周術期患者の局所・全身における好中球細胞死と好中球機能について検討した。【方法】外科手術患者11例を対象に、末梢血は術前、術後第1、3、7日目に、腹腔ドレーン排液は術後1、2、3日目に採取した。それぞれの分離好中球を用いてフローサイトメトリーによる好中球細胞死と光学顕微鏡による好中球細胞死形態を測定した。電気泳動法によるDNA断片化も測定した。また、好中球機能の評価として活性酸素産生能とCD16(IgG FcレセプターIII)発現能、TNFレセプター発現能をも測定した。さらに培養上清のサイトカイン濃度も測定した。【結果】 1)末梢血の好中球のアポトーシスは術後1日目から術後3日目において抑制され、術後7日目には回復すること、2)腹腔ドレーン排液中の好中球アポトーシスも術後1日目では極めて抑制され、その後に回復すること、3)術後局所の好中球アポトーシスが抑制されているほど、活性酸素産生能が亢進していること、4)これらの末梢血および局所の好中球のアポトーシスの抑制は手術侵襲と相関すること、5)腹腔局所の術後早期の好中球アポトーシスにTNF-α、IL-6、IL-10濃度が関与する可能性があること、などが示唆された。【結語】これらの成績から、外科手術患者では、術後の経過とともに、ドレーン排液中と末梢血の好中球のアポトーシスが誘導され、好中球機能も正常化し、炎症所見も消退する。そして、この術後の好中球アポトーシスにサイトカインが関与する可能性が示唆された。このような侵襲時における好中球アポトーシスをめぐる現象は、生体の防御にとって合目的であると考えられる。
|