研究概要 |
Mn 1日20μmol(1.1mg)を含有する微量元素剤の投与を平均10.5カ月間受けていた在宅静脈栄養患者11例[男7、女4、年齢;32〜65歳平均45歳、疾患内訳;炎症性腸疾患5例、短腸症候群3例、慢性仮性腸閉塞症2例、その他1例]にMnを除いた微量元素製剤の投与に変更した。変更後、1ヵ月毎に血漿並びに全血中Mn濃度をフレームレス原子吸光法にて測定した。また脳MRIを2〜5ヵ月毎に施行しT_1値を測定した。T_1値はTime of repetitionが660 msecと2500msec(Time of echoはともに15msec)における信号比から算出した。その結果、血漿Mn値はMn off後1ヵ月目0.89±0.54μg/1(M±SD)と健常人値(3.65±1.0)、前値(2.25±0.62)より低値となり以後ほぼその値で推移した。全血中Mn値はoff前は43.7±16.9μg/1と健常人値(14.6±4.7)に比べ高値であったが、off後は漸次低下し3ヵ月目より健常人値内を推移した。脳MRIではoff前、T_1強調画像で軽微な1例を含め全例基底核にHIの所見を認めたが、5ヵ月以降陰性化し、9ヵ月以後全例にHIを認めなくなった。脳MRI所見をHI(+)群、HI(±)群、HI(-)群の3群にわけT_1値をみるとそれぞれ509±73.2,742±125.2,961±128.0 msecで各群間に有意差がみられた。T_1値(Y)とMn off期間(X_1)、血漿Mn値(X_2)、全血中Mn値(X_3)とはそれぞれY=1.22+397.5×log(X_1)(r=0.82),Y=717.7-410.8×log(X_2)(r=0.53),Y=1448.5-567.1×log(X_3)(r=0.80)の式で求められ、特にT_1値とMn off期間、全血中Mn値との間に高い相関係数が得られ、脳MRI所見とT_1値はMnの指標として有用と思われた。今後はMn投与量を変化させて検討する予定である。
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