研究概要 |
静脈栄養(TPN)時のMn動態は明らかでなく、Mnの生体内指標や至適投与量についても問題がある。そこで長期Mn投与を受けているTPN患者を対象として、Mnのon-off studyを行い、血中 Mn濃度、脳MRI、T_1値を測定しMn指標を検討し、静脈栄養時のMn投与至適量を求めた。 血漿Mn値はoff前は健常値内であったが、off後は1ヵ月目に前値、健常値に比し有意な低下を示し、以後その値を維持した。再投与後は7ヵ月以降増加傾向にあるが低値で推移した。 全血Mn値はoff前、健常値に比し有意に高値であったがoff後は漸次低下し3ヵ月以降健常値内を推移した。再投与後は3ヵ月目まで漸次増加し健常値より高値を維持した。 脳MRIT_1強調画像で淡蒼球部にみられる高信号(high intensity:HI)はoff前はほぼ全例に認められ、off後は経過と共に5ヵ月目以降陰性化し、11ヵ月目ではほぼ全例陰性化した。 全血Mn値は血漿よりもMRI所見をよく反映していた。またT_1値はHIの程度とよく関連し、また Mn off期間、血中とくに全血Mn値と有意の相関を示し客観的指標として有用と思われた。 全血Mn値、脳MRI、T_1値から1日Mn至適投与量として0,1,2,20μmolを検討した。投与6ヵ月以降の全血Mn値の平均値は用量依存的に上昇がみられ、20μmol投与では健常人値より有意に高値であった。2μmol以下の投与では健常人値と有意な差はみられなかった。しかし2μmolでは正常を上回るものがみられたのに対し、1μmolでは全て正常範囲内であった。投与なしでは正常の-ISD以下が多くみられた。MRI所見では20μmol投与以外では全てがHI(-)所見であり、20μmol投与では1例を除き全てHI(+)であった。淡蒼球T_1値は用量依存的に短縮しており、20μmol投与時は他の投与時に比べ有意に短縮していた。また2μmolでは投与なし並びに経腸栄養に比べ有意に短縮していた。以上より、1日1μmolが2または20μmolに比べより適量と思われた。
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