研究概要 |
本研究は,各種腫瘍のテロメラーゼ活性の活性レベルおよびテロメア長さが術後再発,転移予測のBiomarkerとなりうるかを検討することを目的とし,種々の癌組織でのテロメア長・テロメラーゼ活性を測定し,これらの症例の臨床経過・病期・予後との相関を検討した。 凍結保存した成人癌653腫瘍(肺癌,乳癌,消化器癌),小児癌164腫瘍についてサザン法でテロメア長(Terminal restriction fragments)を測定したところ,8kb以上の有意な短縮を19-50%に,15kb以上の過長を0-19%に認めた。TRAP assayで腫瘍のテロメラーゼ活性を検出すると48-100%に活性を検出した。テロメラーゼの定量から高活性であった腫瘍は,腫瘍の種類によって異なり17-81%で,胃癌,大腸癌では約50%であり,膵癌,横紋筋肉腫では70%以上を占めていた。テロメラーゼ活性が高く,テロメア長が短い症例は,術後再発または転移が多く極めて予後不良で,再発転移予測のBiomarkerとなる可能性が示唆された。さらにこれらの腫瘍のうち,凍結切片診断用材料の切片からの抽出液で,テロメラーゼ活性レベルを検討すると,高活性腫瘍は活性が充分検出された。同様の切片を用いてin situ PCR法で,個々の細胞のテロメア長,テロメラーゼRNA(hTR)発現を観察中であるが,高活性腫瘍は腫瘍を占めている細胞の殆どがhTRを発現しているのに対し,低活性腫瘍は組織ないでの発現細胞が少なくheterogeneityが存在した。凍結切片で得たhTR発現レベルは再発転移の予測因子として有用であると共に,全体の活性レベルとしては低いが腫瘍組織内で高活性細胞が存在するような腫瘍を判別するのにも有用な検査法となる可能性が示唆され,現在さらに検討中である。
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