研究概要 |
本研究は,各種腫瘍のテロメラーゼ活性の活性レベルおよびテロメア長さが術後再発,転移予測のBiomarkerとなりうるかを検討することを目的とし,種々の癌組織でのテロメア長・テロメラーゼ活性を測定し,これらの症例の臨床経過・病期・予後との相関を検討した。 胃、大腸、膵、肝腫瘍のうち,凍結切片診断用材料を用いてin situ hybridazation法,in situPCR法で,個々の細胞のテロメラーゼRNA(hTR)発現,hTERT mRNA発現を観察中であるが,高活性腫瘍は腫瘍を占めている細胞の殆どがhTR,hTERTを発現しているのに対し,低活性腫瘍は組織内での発現細胞が少なくheterogeneityが存在した。また,一部の症例でin situTRAP法にて個々の細胞のテロメラーゼ発現レベルの差を検討したが,hTERT mRNA発現レベルとほぼ一致した.以上から,凍結切片で得たhTERT mRNA発現レベルは再発転移の予測因子として有用であると考え,RT-PCR法によるhTERT mRNA発現の検出系を確立した. また,上記症例のうち、手術時に採取した健常肝組織(n=38)、腹水中細胞(n=31)においてテロメラーゼ活性、テロメア長,hTR,hTETRT mRNA発現を検討したが,転移のある症例ではテロメラーゼ活性やhTERT発現がみられたが,他の症例では検出できず,これらのうち後に肝転移・腹膜播種を呈した症例とそれ以外の症例を識別することは困難で,これらが潜在的肝転移、腹膜播種を判定しうる有用マーカーとは考えられなかった.
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