研究概要 |
食道癌は極めて悪性度が高く、予後不良であるため、臨床の立場から悪性度の指標となるマーカーが必要である。本研究では、食道癌における各種遺伝子の発現を検討し、各種臨床病理学的因子との関連を明らかにすることによって、食道癌の発癌、癌進展などの過程で各種遺伝子の果たす役割とその腫瘍マーカー・予後因子としての有用性を確認し、新しい遺伝子診断法新しい治療法を確立することを目標とする。 切除標本における腫瘍特異性抗原MAGE遺伝子10種の発現をRT-PCR法で確認した。癌腫50例中の発現陽性率は、MAGE-6の6%を除きほとんどが30%〜60%であり、94%の癌腫でMAGE遺伝子のいずれかが発現していた。また正常上皮では全く発現が認められなかった。ただし、各MAGE遺伝子の発現の有無と臨床病理学的諸因子との関連は認められなかった。(論文発表)。 一方、切除標本31検体の87%、剖検例の正常食道上皮92検体の23%にテロメラーゼ活性が確認された。しかし、テロメラーゼ活性の有無と臨床病理学的諸因子、またテロメア長の差には関連性が認められなかった。(論文発表)。 切除標本の癌腫と正常上皮のオルニチン脱炭酸酵素mRNAの発現をRT-PCR法で確認したところ、64症例中58例(90.6%)と極めて高頻度に癌腫における過剰発現が認められた。この発現は,進行度,リンパ節転移の有無,静脈侵襲の程度と有意の相関が認められた。また組織型では、扁平上皮癌で未分化癌より有意に高く発現していた。切除成績をみると、高・中分化扁平上皮癌では高発現群が低発現群より有意に予後不良であった。(米国外科学会年次総会で発表)。 この他にも、食道癌のmicrosatellite instabilityやinsulin growth factor発現などを検討し、学会発表している。
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