研究概要 |
食道癌は極めて悪性度が高く、予後不良であるため、悪性度の指標となるマーカーが臨床的に有用である.本研究ではdifferential screening,subtraction library,differentail displayなどの手法で選択した遺伝子や既知の遺伝子を用いて、食道癌切除標本におけるmRNAレベルのの発現を、Northern BlotやRT-PCRによって検討した。このような過剰発現など癌における遺伝子発現の変化のほかに、突然変異の検索、遺伝子の多型性、不安定性など多方面にわたって遺伝子変化の検討を行った。さらに各種臨床病理学的困子との関連を明らかにすることによって、その腫瘍マーカー,予後因子としての有用性を確認した。以上の検討から、テロメラーゼ活性、腫瘍特異性抗原MAGE遺伝子、オルニチン脱炭酸酵素、PyNPase、Grb7、DMBT1、integrinα6、L-myc遺伝子多型に関しては、本研究期間に論文発表を行った。この他に、insulin-like growth factor2、p53点突然変異、microsatellite instability、p53、Rb、bcl,manganese superoxide dismutase、matrix metalloproteinase-7、p53遺伝子多型などの検討に関しても、学会報告を行っている(一部は既に論文発表)。新たな予後因子としては、オルニチン脱炭酸酵素integrin α6,、Gfb7、PyNPaseなどのmRNA発現が候補としてあげられる。これらに、我々が以前論文発表したelongation factor-1γ mRNA発現や、既知の遺伝子として報告されているc-myc、EGFレセプター、hst-1/int-2、cycline Dなども含めて、どの遺伝子変化(もしくは遺伝子変化の組み合わせ)が、予後因子として有用かを総合的に検討する必要性がある。 オルニチン脱炭酸酵素mRNAに関しては、切除標本とほぼ同様に、内視鏡下生検標本からその発現の検討が可能であり、遺伝子診断法のひとつとしての可能性が示された。またMAGE遺伝子は、免疫治療への応用が検討されており、いずれも今後の発展が期待される状況にあるといえる。
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