研究概要 |
慢性実験に先立ち、大動物を用いた急性実験において人工循環の拍動性が血管内皮由来NO産生に及ぼす影響について拍動の頻度、脈圧の程度に分け検討を行った.雑種成犬10頭を用い、左房一左室脱血、胸部下行大動脈送血で左心補助人工循環を作成.遠心ポンプと空気駆動拍動ポンプを直列に接続.ポンプ流量を一定とし以下の実験を行った。(1)脈圧を50mmHgに固定し、拍動数を0,30,60,120/minと変化させ血行動態の変化および血中NO^2-/NO^3-濃度を測定した.(2)拍動数を120/minに固定し、脈圧を0,20、50mmHgと変化させ同様の測定をした.これらを(1)合成酵素阻害剤(L-NAME)の投与前後で比較した.また血圧および血流の最大変化率を求め比較した.この結果拍動数および脈圧の増加に伴い灌流圧および体血管抵抗値は有意に低下.血中NO^2-/NO^3-濃度は増加を示した.L-NAME投与により拍動数および脈圧の変化に伴う血行動態は有意に抑制された.これにより、体血流における拍動の頻度は独立した血管内皮由来NO産生刺激因子であり、脈圧の増加による血管内皮由来NO産生作用はそれに伴う血流変化速度の増大が影響しているものと考えられた. ヒト内皮培養細胞を用いたin vitroの実験にいける内皮細胞のNitric Oxide産生能の報告はあるが、in vivoにおける実験は報告がない.慢性実験に先立ち急性実験にて実験系は確率された.今回の結果をふまえて、慢性実験における更なる実験成果が期待できる.
|