研究分担者 |
吉松 俊英 大分医科大学, 医学部, 医員
添田 徹 大分医科大学, 医学部, 医員
山田 和廣 大分医科大学, 医学部, 教授 (20053027)
岩田 英理子 大分医科大学, 医学部, 医員
|
研究概要 |
低体温体外循環における脳保護の基礎的及び臨床的研究として以下の3件について研究した。 [研究1]近赤外分光モニタ-を用いた体外循環中の脳酸素代謝に関する臨床的検討 サルにて逆行性脳灌流(RCP),順行性脳灌流(NCP)及び循環停止(CA)下でATP,クレアチニンリン酸(PCr),細胞内pHの推移をmagnetic resonance spectroscopyで測定した。CA群ではATP,PCrが低下し,細胞内acidosisも高度であったが,RCP群ではATPの低下はなく,再灌流後の回復もよかった。RCPはCAの安全な時間を延長させることができると思われた。 [研究2]軽度低体温下循環停止における薬理学的脳保護 生後4周の豚にて体外循環下に20℃,25℃,30℃で1時間の循環停止を行い再灌流後2時間で復温を行った。30℃ではAMPA receptor antagonist(YM90K)を投与し,クレアチニンリン酸(PCr)と細胞内pHの時間的推移をmagnetic resonance spectroscopyにて測定した。PCrはYM90K投与群にて有意に回復,細胞内pHもYM90K投与群にて冷却前値まで回復した。30℃循環停止下でYM90K投与が脳神経細胞におけるエネルギー代謝と細胞内pHを改善することを確認した。 [研究3]体外循環中の脳障害の指標としてのS-100蛋白に関する臨床的検討 体外循環中及び後のS-100蛋白をimmunoradioassayを用いて測定し,体外循環手術における脳合併症の早期診断の指標を検討した。S-100蛋白は体外循環開始後有意に上昇,終了後は漸減し,非合併症例では5,10時間後には前値に戻った。合併症例ではS-100蛋白の上昇が遷延しており,体外循環における脳合併症の早期診断の指標として体外循環終了後より5〜10時間のS-100蛋白値が有用であると思われた。
|