研究概要 |
【ターボ型人工心臓制御in-vitroシミュレーション】 模擬回路試験を用いて,定常流人工心臓のモータ電流の拍動性について検討した.特別に製作した模擬循環回路は,サック型拍動流ポンプ,3つのリザーバ,定常流人工心臓としての斜流ポンプよりなり,モータ電流波形等をモニターした.回転数を変化させ,電流の振幅を電流平均値で除した電流振幅指数(ICA)を求めた.ICAを回転数に対してブロットしたところいくつかの特徴点(t-i点,PR0.7点,PR0.5点, maxQ点)が同定された.t-i点はポンプの補助が部分補助から完全補助に移行する点によく一致した.収縮能,後負荷,前負荷を変化させた時,各点でのポンプ流量は前負荷に依存し,Starlingの法則に似た特徴を示した. 【ビーグル犬を用いた急性動物実験】 左室-下行大動脈バイパス(左心補助:n-8)と右房-肺動脈バイパス(右心補助:n-5)をそれぞれ行い,モータ電流から電流振幅指数(ICA)を求め,血行動態の変化と比較した.左心補助では,ICAより補助状態が部分-完全補助の移行点(t点)と吸い付きが著明になる点(s点)を良好に同定できた.t点でのポンプ補助流量は左室拡張末期圧と高い相関を認めた.右心補助では,ICAでt点を同定できなかったが,s点は良好に同定できた.このs点のポンプ流量は上行大動脈流量より一時的であるが越えることが多かった.左心補助では本法を応用し自然心のStarlingの法則に近い制御が行える可能性があると考えられた.右心補助では吸い付き現象を検知できたが,過剰な補助流量を防ぐ工夫を加える必要があると考えられた. 【山羊を用いた慢性動物実験】 成山羊4頭を用い,斜流式人工心臓による経左房左室脱血-大動脈送血での左心バイパスを行った.ポンプは抗血栓性評価のため定期的な交換を前提として体外に設置した.術後2日目(完全麻酔覚醒下)にモータ電流から電流振幅指数(ICA)を求め,ビーグル犬急性実験と同様に,ICAより補助状態が部分-完全補助の移行点(t点)と吸い付きが著明になる点(s点)を良好に同定できた.
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