本研究では自己の組織内に含まれる内因性サイトカインを植え込み後にその場所で活性化することにより、個々の治癒力を最大限に発揮できる人工臓器を冠動脈バイパス術用の小口径人工血管という形で開発するのを目的としている。細切した自己の結合組織片という生きた細胞を含んだ生体材料と布製の人工血管を組み合わせたハイブリットの人工血管であることを利用して細胞に細胞工学的手法を使うことにより、VEGFおよびbFGFなどのサイトカイン、ヘパリン様物質を産生させ、例えば高度の抗血栓性を持つ、形成された血栓を溶解する、動脈硬化を減衰させるなどの能動的な機能を発揮するように設計したい。 現在までのところ、組織片を播種し、in vivoにて治癒を観察しているが、血管新生、線維芽細胞の増殖遊走、植え込み後の治癒過程を免疫組織染色にてbFGF、VEGF、ファクターVIII、抗マクロファージ抗体CD68などを用いて観察している。遺伝子導入のpreliminary実験で組織片を播種したメッシュのマクロファージおよび線維芽細胞に導入されることを観察している。現在は細胞の種類、範囲、検出方法などを検討しているが、今後、機能を賦与していきたい。 本研究は動脈硬化症の外科治療の進歩に大いに貢献するばかりでなく、将来の多機能型人工臓器への発展も目指している。
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