人工臓器の耐久性・生体適合性を早期に予測するシステムの開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09470288
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 梅津 光生 早稲田大学, 理工学部, 教授 (90132927)
• 研究分担者: 富岡 淳 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (40217526) ; 藤本 哲男 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 講師 (50267473) ; 阿久津 敏之介 関東学院大学, 工学部, 教授 (90231852) ; 北村 信夫 熊本大学, 医学部, 教授 (70075513) ; 川副 浩平 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50075561)
• キーワード: 加速耐久試験 / 人工弁 / ポリウレタン弁 / 回転型成形機 / 膜厚 / 偏差係数 / 弁葉 / 水力学特性

研究概要

平成6-8年の科研費の援助によって,新しい人工弁の加速耐久試験システムが組み上がった.そこで,本年度はその装置の基礎特性を様々な角度から求め,改良の方向性を見極める実験を多数行った.まず,耐久試験に用いる同一性能のポリウレタン人工弁を大量に制作する試みからはじめた.ポリウレタン弁(PU弁)は、液状のポリウレタンをモ-ルドに塗布し、それを2軸(Major軸とMinor軸)を有する回転型成形機で薄膜を形成する作業を繰り返すことによって作られる。この2軸の回転数を独立してコントロールし、かつ一度に3個のPU弁を製作可能な台座を製作した。その結果、製作時間を従来の3分の1にすることができた。また、同一製作条件のサンプル間において、その平均値に対する偏差を5%以下に押さえることが可能となった。さらに、回転型成形機の主軸回転数に関して、弁葉中心部の膜厚が厚くなる条件を求めることができた。副軸回転数は3枚の弁葉間のばらつきをなくす効果が認められた。
この結果を受け、膜厚分布の違いをパラメータとした被試験弁について、水力学特性試験(定常流試験、漏れ試験、拍動流試験)を行った。この結果、弁葉の膜厚のばらつきを示す指標である偏差係数(膜厚平均値に対する標準偏差)が35%程度の均一な弁葉を有する弁で、弁前後の圧較差において、機械弁に近い結果が得られた。また、この弁を用いて、昨年度までに完成したシステムと最近設置したドイツ製の2種類の耐久試験機で加速耐久試験を行った結果、ともにPU弁は約1ヶ月の耐久性が認められた。しかしPU弁の破断形式が異なることが確認された。今後の耐久試験方法の確立に向けて多くの基礎データが取得できた。

研究成果

• [文献書誌] 長久大地,井内康浩,藤里俊哉,辻 隆之,梅津光生: "ポリウレタン製人工弁閉鎖不全の解析" 医用電子と生体工学. 第35巻特別号、35. 467 (1997)
• [文献書誌] 長久大地,井内康浩,藤里俊哉,辻 隆之,梅津光生,大場謙吉: "ポリウレタン製人工弁閉鎖不全の解析" 第9回バイオエンジニアリング講演会. 講演論文集、No.96-48. 111-113 (1997)
• [文献書誌] 長久大地,藤里俊哉,辻 隆之,梅津光生,大場謙吉: "ポリウレタン製人工弁閉鎖不全の温度変化による影響" 第20回日本バイオレオロジー学会. 年会抄録集. 46 (1997)
• [文献書誌] Daichi NAGAHISA, Toshia HUJISATO, Takayuki TUJI, Mitsuo UMEZU, et al.: "Quantative Evaluation Regurgitation in Polyurethane Tricuspid Aortic Valve" The Third Far-Eastern Symposium on Biomedical Materials.Abstract. 84 (1997)
• [文献書誌] 梅津光生,Teoh Swee-Hin: "人工臓器製作用三次元回転成形機" 医用電子と生体工学. 第35巻秋季特別号. 55 (1997)
• [文献書誌] Mitsuo UMEZU, Manoja RANWAKE, John WOODARD, et al.: "Basic Study Towards the Establishment of a Fabrication Technology for a Vacuum-Formed Blood Pump" Springer-Verlag. Heart Replacement-Artificial Heart6. 353-357 (1998)
• [文献書誌] Msakazu Nurishi, Kazushige Iinuma, Mitsuo Umezu, et al.: "Establishment of an internal coating method of Blood Pumps with Non-Thrombogenic polymer" 9th International Conference on Biomedical Engineering. December 3-6, Singapore. 286-288 (1997)
• [文献書誌] Kiyotaka IWASAKI, Mitsuo UMEZU, Hideki WAKUI, Hiroyuki KAWADA, Tetsuo FUJIMOTO, Kou IMACHI: "Improvement of Dynamic conditions in the acclelerated fatigue testing for prosthetic heart valve" 9th International Conference on Biomedical Engineering. December 3-6, Singapore. 342-344 (1997)