研究分担者 |
阿久津 敏乃介 関東学院大学, 工学部, 教授 (90231852)
北村 信夫 京都府立大学, 医学部, 教授 (70075513)
川副 浩平 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50075561)
内山 明彦 早稲田大学, 理工学部, 教授 (50063615)
藤本 哲男 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 助教授 (50267473)
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研究概要 |
高分子製人工弁の加速耐久試験方法に関しては,ISOでもまだ規格が確立されておらず急務になっている.そこで第3年度は,人工心臓用に開発中のJellyfish弁(人工心臓用高分子製弁)を用いて,信頼性のある加速耐久試験方法の確立を目指した.まず,弁閉鎖時の最大圧較差を120mmHg,作動流体の温度を37℃に設定して駆動周波数20Hz(1200BPM)で加速耐久試験を行い,平均ポンプ拍動数105BPMで行った慢性動物実験結果と比較した.同時に閉鎖時の弁葉に生じる応力及びひずみを有限要素法を用いて解析した.その結果,加速耐久試験では応力の集中するスポークのエッジ上で弁葉が脆性破壊しているのに対して,慢性動物実験ではひずみの集中するスポークとスポークの間で弁葉が延性破壊していることがわかり,両者の破壊メカニズムは根本的に異なることが分かった.そこで,加速耐久試験と慢性動物実験での大きな違いと考えられた(1)弁閉鎖瞬間のスポークと弁葉の摩擦量の大きさ,(2)弁葉材料の粘弾性特性の違いの影響を考慮し,(1)閉鎖時の弁葉に作用する最大荷重,(2)作動流体の温度に着目してさらに加速耐久試験を行った.その結果,作動流体の温度が40℃の下では,閉鎖時の弁葉に作用する最大荷重を動物実験と同条件に設定した摸擬循環実験装置で得られた荷重の3/4(12N),1/2(8N)および1/4(4N)に設定しても,弁葉はいずれもスポークのエッジ上で破断した.しかし作動流体の温度を60℃に設定した条件では,弁閉鎖時の最大荷重を1/4(4N)に設定することで初めて慢性動物実験結果と同じスポークとスポークの間で弁葉を破断させることに成功した.したがって,高分子製人工弁の加速耐久試験では,弁閉鎖時の最大荷重及び作動流体の温度は最重要設定項目であることが本研究を通じて明らかとなり,現状のISO基準に拡張を促す基礎データを入手できた.
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