研究課題/領域番号 |
09470298
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研究機関 | 佐賀医科大学 |
研究代表者 |
田渕 和雄 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (50116480)
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研究分担者 |
木原 俊一 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (30253610)
峯田 寿裕 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (20264187)
福山 幸三 佐賀医科大学, 医学部, 講師 (60238516)
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キーワード | glioma / p53 / p16 / FGFR2 / Mxi-1 / prognosis / PTEN / Chromosome 10 |
研究概要 |
49例のglioblastoma(GBM)を対象とし、p53遺伝子(17p13.1)、p16遺伝子(9p21)、第10染色体長腕上のPTEN、Mxiー1、FGFR2遺伝子について、遺伝子異常の有無を解析し、また遺伝子発現を免疫組織学的に解析した。同時に各症例の形態学的特徴、細胞生物学的特徴、臨床的特徴と比較した。GBMには、p53遺伝子の異常が発がん早期から関与するprogression typeと、p53遺伝子の異常が関与しないde novo typeとが存在する。我々が経験した49例のGBMの解析では、progression type GBMは、de novo GBMに比較して、発症年齢が比較的若いこと、生存期間がやや長いことなどが判明した。つまり、de novo GBMでは、p53遺伝子以外の、より悪性の遺伝子異常が関わっていると考えられた。 bFGFは、一般にヒト神経膠腫で発現が増加している強力な血管新生因子の一つで、そのレセプターにはFGFRー1、2、3、4が存在する。FGFR1/flg遺伝子は神経膠腫の悪性化とともに発現が増強するが、逆にFGFR2/bek(10q25)遺伝子の発現は低下する。de novo type glioblastomaでは、15/49において発現の低下が認められ、4/11にLOHが検出された。FGFRー2の発現が低下している症例の臨床経過は、FGFRー2の発現している症例と比較して、有意差を以て不良であることが判明した。FGFR-2の発現の低下やLOHを認める15例の内訳は、p53遺伝子の異常を伴う31例中10例、p53遺伝子が正常である17例中5例であった。FGFR-2の異常は、p53遺伝子異常とは無関係に同じ頻度で起こっていると考えられた。つまり、progression type、de novo typeの双方の発生に関与するものと考えMxiー1られた。Mxiー1遺伝子はMyc、Maxの阻害因子として細胞増殖を負に調節すると考えられている。15/49例のGBMにおいて、Mxi-1遺伝子の発現の欠失を認め、3/11にLOHが検出された。Mxi-1遺伝子の発現の低下している15例は、p53遺伝子の異常を伴う31例中8例、p53遺伝子が正常である17例中7例であった。Mxiー1遺伝子の異常は、de novo GBMにやや多く検出され、Mxiー1遺伝子異常はde novo GBMの原因遺伝子の一つであることが示唆された。しかし、Mxiー1遺伝子の発現が欠失している症例の臨床経過は、そうでない症例と有意差は見られなかった。 p16遺伝子の異常は38/49のGBMにおいて検出されたが、症例の臨床経過は、p16遺伝子の異常の有無では有意差は見られなかった。しかし、p16遺伝子の異常群ではMIB-1陽性率はやや低い傾向が見られた。p16遺伝子が正常のGBMでは、Rb遺伝子の異常やCDK4遺伝子、MDM2遺伝子の増幅を見ることが多く、それらは細胞周期により直接的に関与しているのではないかと考えられた。今後は、CGH法やFISH法を用いて、これらの遺伝子異常をより敏速、且つ簡便に検出する方法を確立してゆく必要があると考えられた。
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