前頭蓋窩近傍病変の手術おいて、嗅粘膜電気刺激による嗅覚誘発電位の記録を試み、術中モニタリングとして臨床応用している。代表例としては、右嗅窩髄膜腫の症例で、術前に嗅覚消失が認められた右側では誘発電位が測定できなかったものの、誘発電位が記録された左側では術後も嗅覚機能が温存されていた。誘発電位の有無は嗅覚機能と良く相関し、術中モニタリングとして有用であった。 しかしながら、未だ動物実験では可能であった頭皮上からの記録が得られておらず、観血的な方法に頼らざるを得ない。今後は、非観血的な機能評価を目指して、誘発電位の加算法の工夫、測定方法の改良について検討を加えなければならない。 また、本法では刺激電極を経鼻腔的に嗅粘膜上に留置するため、極度の鼻中隔変異の症例では電極の留置・固定が不安定になりやすい。そのため、刺激方法および刺激電極の開発・改良を重ねながら、臨床応用を増やしていく必要がある。
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