研究概要 |
目的:重症頭外傷患者の酸素代謝障害に伴う脳アシドーシスに対する過換気(HV),低体温(HT),tromethamine(THAM)の治療効果を,髄液と頚静脈血(JB)のpH,PCO2,HCO3-,PO2,SO2,乳酸・ピルビン酸(La/Py),さらに頸静脈洞酸素飽和度(SjO2),局所脳酸素飽和度(rSO2),頭蓋内圧(LCP)・脳灌流圧(CPP),頸静脈血液温(Tib),呼気終末PCO2との関係から解析し,その意義を検討する. 対象と方法:対象は,重症頭外傷13例(限局損傷9,びまん性損傷4;17-66,平均39歳).全例,受傷2週以内の急性期に脳室内髄液の温度,pH,PCO2,HCO3-,塩基過剰,PO2,SO2の連続モニタリング(10-288時間,平均94)とLa/Py測定(n=8)を行い,JBでも同パラメータを1-4回計測,Tjbで補正した髄液とSjO2,rSO2,ICP・CPP,Tjb,PetCO2との関係を解析した.評価は,各パラメータと,1)HVではPetCO2とJBCO2との相関,2)HT(n=9)はTjbとの相関,3)THAM(n=2)は0.3M溶液pH(pH8.0)を500ml急速点滴静注し56分間の各パラメータと中大脳動脈の血流をも解析した. 結果:1)HV:PetCO2やJBPCO2とJBpHは相関するも(r=-0.76),髄液pHとは常に相関しなかった.2)HT:髄液PCO2は低下しpH上昇(r=-0.7),SO2も上昇傾向を示した.g)THAM:PetCO2は不変も髄液PCO2上昇に伴い,血流とSjO2は上昇するも,髄液HCO3-は軽度低下し,髄液pHは低下した. 結論:重症頭部外傷患者の髄液アシドーシスに対するHV,HT,THAMの効果は直接的ではなく,酸素代謝障害の改善に基づいた軽度アシドーシス下での管理が適切と思われるが,そのためには髄液(細胞外液)におけるモニタリングが必要で,今後の解析が望まれる.
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