研究概要 |
本年度は主として進行性のパーキンソン病に対する視床下核刺激の効果を明かにすることができた。即ち、levodopa equivalent doseは、術前が0-990mg(438.0±345.3)で刺激後の評価時には0-875mg(396.4±293.5)と減少したが、統計学的に有為の差は認めていない。しかし、これは11例中6例で術前の1日投与量が0-400mgと小量であったことが原因と考えられ、これらの症例では嘔気、嘔吐、低血圧、精神症状などが投与量を抑制する原因となっていた。刺激の効果についての検討では、total motor score(UPDRS Part III)でoff-periodが31.5±10.1から22.3±10.8(-29%,P<0.004),on-periodが24.5±9.8から18.2±11.4(-26%,P<0.005)に減少した。このような変化はlevodopaの投与量が少ない症例に著明に認められ、小量投与群の6例ではoff-periodで44%,on-periodで35%の減少を認めた。また1日の中に占めるoff-periodの割合が33%減少した。従って、STN刺激はoff-periodに認められるlevodopaの作用低下を補うことができ、症状の変動を減少させることから患者の運動面での日常生活を改善することができる。またon-periodであってもlevodopaの投与量が制限される症例ではこれを補い、症状を改善することができる。しかし、大量のlevodopa投与に対しても反応しなくなった症例では、十分な効果は期待できない。
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