研究概要 |
破裂動脈瘤壁では組織学的に壁構造の脆弱化と共にマクロファージの侵入を認め,マクロファージ由来のプロテアーゼの発現を認めた.こうした炎症反応・構造の脆弱化は無症候性の未破裂動脈瘤壁では統計学的に有為に乏しかった.しかし,動眼神経麻痺を生じた内頸動脈瘤などの症候性未破裂動脈瘤では破裂動脈瘤と近似した病態を認めた.また動脈瘤培養実験では細胞接着因子の中で破裂動脈瘤においてVCAM-1の有意な発現を認め,炎症反応に関与していると考えられた.こうした炎症反応を生じうる物として慢性感染が考えられる.これまで動脈壁の動脈硬化巣に慢性感染を生じうるものとしてChlamydia pneumoniae,Cytomegalo virus,Hlicobacter pyloriが報告されている.動脈瘤組織内でのChlamydia pneumoniae,Cytomegalo virus,Helicobacter pyloriのDNAの存在の可能性についてPCR法により検討を加えたが、破裂動脈瘤,未破裂動脈瘤ともに調べた範囲内ではnegativeであった.現在,引き続き動脈瘤壁への炎症反応を生じうる病態について検討中である.
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