研究概要 |
1)骨転移動物モデルの確立 B-16 メラノーマ細胞をC57BL/6マウスの心臓内に注入することにより高率に下肢骨に転移を成立させることに成功した。さらに、骨転移成立の過程を解析するより単純な系の獲得のため、マウス背部皮下組織内に同種骨を移植した後に腫瘍細胞を心臓内に注入し移植骨に骨転移を起こすことを試みた。この結果、70-80%以上の確立で移植骨に転移が成立する異所性骨転移モデルを確立した。この系での転移の成立過程を組織学的に観察すると、まず移植骨に新生血管が侵入し、それに伴い腫瘍細胞が移植骨表面に到達し、骨膜面および骨髄に骨転移が成立するのが観察された。その後時間の経過に伴って個々の腫瘍は増大し転移巣の数も増加した。 2)骨転移の抑制研究 異所性骨転移動物モデルを使用して骨転移を抑制する薬剤の開発研究が行われた。細胞増殖に関与するポリアミンの合成阻害剤(Methylglyoxal-bis-cyclopentylamidinohydrazone,MGBCP)の腹腔内投与(20mg/kg/日の28日間の連日投与)は異所性骨への転移形成を著明に抑制した。MGBCP投与群では骨転移は14%のみにみられたが、非投与群では87%に異所性骨に転移がみられた。体重減少を認めず、その他にも重篤な副作用をみなかった。副作用の無い骨転移抑制剤としての臨床応用の可能性が示唆された。 3)局所温熱療法による骨転移の治療 骨セメントに強磁性体であるマグネタイトを混入し外部より強力な磁場を加えることにより材科を発熱させる新しい温熱治療法を開発した。このシステムは必要な温度を容易に獲得でき、繰り返し加温でき、さらに材料そのものが力学的強度を有するため骨転移治療の臨床応用の可能性を明らかにした。
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