研究概要 |
1.ヒト骨肉腫におけるシグナル伝達系の変異解析: TGF-bのII型受容体,SMAD1及びCBFA1遺伝子に関して,変異解析を施行した。TGF-bRII及びCBFA1に関しては、ゲノムDNAを用いたPCR-SSCPによりスクリーニングを行い、塩基配列を解析した。SMAD1に関しては、RT-PCRにより全長を増幅して、その塩基配列を直接解析した。結果として、いずれの遺伝子にもシグナル伝達機構に影響を与えるゲノムの変異は検出されなかった。骨肉腫に加えて、TGF-bの作用が、軟骨細胞の分化・増殖に重要な役割を果たしていることより、ヒト軟骨肉腫25例に対して、同様な解析を行ったが、やはり変異は検出されなかった。 2.ヒト骨肉腫におけるBMPシグナル伝達系の発現解析 8種類の骨肉腫細胞系におけるBMPシグナル伝達系因子、すなわちリガンドであるBMP2及び4、I型及びII型受容体、細胞内シグナル伝達物質であるSMAD1、更に最終的な転写因子の一つとして考えられるCBFA1の発現を解析した。その結果、autocrine機構が作用しているものと、していないものが、存在することが示唆された。CBFA1を発現しており、分化形質を強く発現している細胞系として、Saos2株があり、逆にCBFA1の発現が殆ど認められず、自らは骨芽細胞としての形質を殆ど示さない細胞系としてOST株がある。これらを用いてCBFA1の骨肉腫における役割を解析するために、tetracyclin activatorを用いた発現誘導系を確立した。すなわちtetracyclinの添加により、センスあるいはアンチセンスのCBFA1遺伝子がTetオペレーターによる発現制御ベクターにセンス及びアンチセンスの方向に組み込み、それぞれOST及びSaos2で発現できるシステムを確立し、現在、その結果の解析中である。
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