研究概要 |
田中は一貫して関節症の検討を行ってきた.一連の検討より得られた結果は,活性酸素や一酸化窒素(NO)に代表されるガスメディエーターが関節症の発症に関与し,その調節により病態の進行を予防できる可能性を示唆するものであった.本研究ではガスメディエーターの中でも活性酸素とNOが反応することによって合成されるパーオキシナイトライトに注目した.平成9年度の目標として,変性関節軟骨におけるその発現と意義を検討することとした.軟骨変性のモデルはInterleukin-1(IL-1)処理を行った軟骨を使用した.パーオキシナイトライトの発現はこの分子がチロシンをニトロ化する性質を利用して,免疫組織学的手法により検討した.この結果,IL-1処理12時間後に軟骨細胞周囲に陽性顆粒が観察された.これは抗体の吸収試験などで消失することより,パーオキシナイトライトそのものであることが確認された.さらに精製パーオキシナイトライトは濃度依存性に軟骨細胞のプロテオグリカン合成抑制を惹起することも明らかにされた.次にパーオキシナイトライトの定量に移行した.当初画像解析装置をバ-ジョンアップして定量する予定としていたが,各種研究助成金により共焦点レーザー顕微鏡が導入可能となった.本研究の助成金の一部もこの費用にあて,定量のみならずin situにおける観察も可能となった.我々はすでにIL-1処理の軟骨において,パーオキシナイトライトの産生を観察するとともにその定量に成功している. 以上の結果より,本研究は当初の予定どうり進捗しているものと考える.
|