NOによる血管平滑筋細胞内cGMPの増加は、細胞質内から細胞外へのCa^<2+>の流出(カルシウムポンプの活性化による)と細胞内カルシウム貯蔵部位である小胞体への取り込みを促進し、結果として細胞質内遊離カルシウム濃度が低下し血管の弛緩が惹起される。最近、cGMPがカリウムイオンチャネルを活性化するために、細胞内K^+が細胞外に流出し細胞内電位が低下し過分極状態となり、膜電位依存性カルシウムチャネルを介する細胞外から細胞内へのカルシウムの流入が減少するため弛緩が起こる可能性も指摘されている。一方、一酸化窒素がcGMPを介さず直接カリウムイオンチャネルに作用するという説もある。本研究では、パッチクランプを用いて、単離した肺高血圧血管平滑筋におけるイオンチャネルの変化を記録することを目的とした。本年度は、摘出肺動脈でのカルシウム濃度の変化を蛍光指示薬であるFra-PE3を用いて検討したが、Fra-PE3の負荷条件は、従来報告されている大動脈や腸管膜動脈と異なることが判明した。特に温度変化の条件が重要である。次に単離肺血管平滑筋細胞にたいしパッチクランプにより、whole cell recordingを行うことを目的として、細胞の単離は酵素的に行なった。当初は、ラット主肺動脈を低カルシウム濃度下パパインで12時間低温(4°C)処理したのち、常温に戻しdithiothreitol存在下で肺動脈血管平滑筋の単離を行う予定であったが、現在、他の方法も検討中である。培養細胞は、肺血管平滑筋の純粋培養が必要であり、また、継代培養により細胞形質が変化することが問題である。
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