本研究では、肺高血圧血管平滑筋のイオンチャンネル解析のための血管平滑筋細胞単離を確立することができた。すなわち、(1)ラットにエタノール麻酔したのち、心臓拍動中に速やかに心肺一塊にして摘出し、normal Tyrode液中に浸した。血液除去した後、Ca^<2+>-free Tyrode液に移し、肺動脈を剥離した。(2)剥離した肺動脈をCa^<2+>-free Tyrode液に浸したまま30分間インキュベートして十分弛緩させた。その後、20mg/mlコラゲナーゼを含むCa^<2+>-free Tyrode液にて37℃で90分間酵素処理し、Kraftbrue(KB)液に移し、大口径のピペットを使って、液が混濁するまで吸引排出して撹拌し、肺動脈の血管平滑筋細胞を分散した。(3)ピペッテイングによって得られた混濁液をナイロンメッシュでろ過し、細胞懸濁液を作成した。(4)これを5℃にて90分静置し、単離した血管平滑筋細胞の沈殿を促した。一方、培養細胞は、肺血管平滑筋の純粋培養が必要であり、また、継代培養により細胞形質が変化することが問題であるので、本研究には不適当である。単離細胞に対し、芯入ガラス管を、電極抵抗を5MΩ前後になるように電極プラーにて2段牽引して作成したパッチ電極を用いて単離した血管平滑筋の膜電位および膜電流の記録をホールセルパッチクランプ法によって行った。パッチ電極には、電極内液(High-K^+pipette solution)を充填した。肺高血圧血管では、高カリウム脱分極状態での細胞内カルシウム濃度の変化が少なくても良く弛緩することが判明した。また、一酸化窒素は、カルシウム感受性に変化を与える可能性がある。
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