研究概要 |
1.ショック発症時には活性化酸素とNOが反応しさらに毒性に強いperoxynitriteが形成される。peroxynitrateはDNAの損傷を起こし,DNA修復酵素であるPoly-ADP-ribosylsynthetase(PARS)が産生される。PATSの過剰産生により細胞内エネルギーの低下は見られ,最終的には細胞死にいたる。アナフィラキシーショック発症時の病態形成にperoxynitritePARSがどのように関与しているかを検討した。PARS抑制薬は全身性アナフィラキシー早期に見られる循環抑制、気管支痙攣を改善しなかった。アナフィラキシー発症早期の病態形成にはPARSにより引き起こされるエネルギー消費を伴うDNA修復経路の活性化は関与していない。 2.単球細胞に特異性をもつphosphodiesterase 4 (PDE4) inhibitorは細胞内cAMP濃度を上昇させることにより,肥満細胞,好塩基球からの脱顆粒を抑制することがin vitroで確認されている。アナフィラキシーショック家兎モデルを用いたin vivoの検討でも、PDE4 inhibitorは有意に気管支痙攣を改善し、循環系に及ぼす影響はaminophyllineに比較し軽微なものであった。PDE4inhibitorはアナフィラキシーの治療薬として有用であることが示された。 3.脊推動物においては、エンドセリンET_A受容体は主に血管収縮に関与している。エンドセリンがアナフィラキシーショック発症後早期にみられる循環抑制、気管支痙攣にどのような役割を果たしているかを検討した。エンドセリンET_A受容体はアナフラキシーショックの病態形成に大きな役割をしていないことを明かにできた。 4.プロポフォールは、アナフラキシー発症時の気管支痙攣に対して、セボフルレンと同等の気管支拡張作用を有していることを明らかにできた。
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