研究課題/領域番号 |
09470337
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
東 英穂 久留米大学, 医学部, 教授 (10098907)
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研究分担者 |
山本 悟史 久留米大学, 医学部, 助手 (60220464)
井口 敞恵 久留米大学, 医学部, 助教授 (10080558)
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キーワード | 脳虚血 / 海馬錐体細胞 / 低温環境 / シナプス応答 / NO / NO scavengers / superoxide dismutase / glutamate |
研究概要 |
成熟ラット海馬スライス標本を作成し、虚血負荷(95%N2-5%CO2飽和グルコース欠乏液を潅流)すると、CA1錐体細胞は虚血負荷6分後に急峻脱分極電位を発生し、この時点で正常潅流液に戻しても、膜電位は消失して不可逆的変化をきたした。不可逆性変化の発生機序を明確にするため、本年度計画した研究を実施し、下記の研究成果を得た。 1)潅流液と組織間液中のNO濃度:潅流液中のNO濃度(酵素電極法で測定)は虚血負荷1分後より増加し始め、6分後(急峻脱分極電位発生時)にはコントロール値の約2倍に増加したが、正常潅流液を再投与すると速やかにコントロール値に戻った。一方、組織間液中のNO濃度(酸化・還元法で測定)は急峻脱分極電位発生後に著明に増加し始め、正常潅流液再投与5分後に最大値に達し、その後、緩やかにコントロール値に戻った。 2)NO関連薬の細胞膜保護作用:No synthase阻害剤(N^G-methyl-L-arginine)、NO scavengers(Hb,carboxy-PTIO)、superoxide dismutase(SOD)でスライス標本を前処置して虚血負荷を行ない、6分後に正常潅流液を再投与すると、膜電位の回復する細胞が多数認められた。これらの薬剤の中で細胞膜保護作用が最も強力なものはcarboxy-PTIOであった。 3)低温による細胞膜保護作用:記録槽の温度を35℃以下の低温環境にすると、急峻脱分極電位発生潜時が延長し、虚血負荷後膜電位の回復する細胞が増加した。至適低温は31℃前後であった。 4)虚血負荷中のシナプス応答変化:虚血負荷4分後にfast EPSCは著明に抑制され、fast and slow IPSCsは消失した。一方、glutamate およびGABA誘起電流の振幅は、これらのuptake機構が抑制された結果、増大したが、GABAA受容体作動薬muscimolおよびGABAB受容体作動薬baclofen 誘起電流は減少あるいは消失した。以上の結果は、虚血負荷によるfast EPSC と fast IPSCの抑制はシナプス前性で、slow IPSCの抑制はシナプス前および後性であることを示唆した。
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