研究概要 |
今回の研究目的は、細胞生物学的な方法と分子生物学的な方法を用いて腎癌細胞とVHL遺伝子を導入した細胞との間で比較し、細胞の増殖と浸潤に直接関わる、または細胞の増殖と浸潤を抑制する蛋白群を同定することである。これにより、VHL癌抑制遺伝子蛋白により直接腎細胞癌の悪性化と進展を直接規定する因子が同定できる。これらのものを抑制することが癌化の抑制につながることも考えられる。 現在、protein kinase Cのある分子種、PKC lamda,PKCzetaが、直接VHL蛋白に結合することが判明した。その結果から腎細胞癌の細胞増殖抑制を行っている可能性がある。protein kinase CとVHL蛋白におけるお互いの結合領域や、作用機構について検討中である。現在までのところ、protein kinase CとVHL蛋白のdeletion mutantを用いた細胞内(in vivo)での免疫沈降反応や、GST fusion proteinを用いたin vitroでの結合実験を行っている。その結果、VHL蛋白のアミノ酸で110-120番目がその結合領域であると判明した。また、protein kinase Cでは蛋白の前半部のprotein kinase Cの機能のregulatory domainで結合することが判明した。お互いの及ぼす作用機構についてもPKCzetaを対象に検討中である。また、VHL蛋白の発現を一定条件で誘導できる細胞株で、VHL蛋白を誘導し、PKClamda,PKCzetaの細胞内での局在についても検討中である。 また、carbonic unhydoraseの幾つかの分子種、特にCA-9,CA-10,CA-12がVHL蛋白の不活性化で逆に活性化することが判明しており、腎細胞癌の分類とどのように関わるか、悪性化とどのように関わるかをRT-PCR法で検討中である。それらの蛋白群は10種以上にわたるため、これらについても更に検討の予定である。 これらの結果により、VHL遺伝子の作用機構と不活性化された際の細胞内で効果について明らかにする予定である。
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