研究概要 |
1) 転移性の培養膀胱癌細胞BOYから得られたcDNAライブラリーをロータスレクチンレセプターを認識するモノクロナール抗体MM4を用いて、スクリーニングしたところ二つの異なるクローンを得た。これらのクローンの一つについてスクリーニングを繰り返すことによって、全塩基配列を決定するのに成功した。オープンリーディングフレームは1368bp,cDNAは約4.3Kbの全く新規の分子であった。また,推定されるアミノ酸構造から,この分子はPro-Gly-Pro-Glyの2度にわたる繰り返し構造を持つとともに,Pro,Ser,Thrに富んだO型の糖鎖を持つムチン様の分子であると考えられた。N末側350bpのcDNAを認識する抗体は,60kDaの糖蛋白質と反応した。また,免疫組織染色上もMM4の染色性と類似し,転移のない原発巣とよりは転移のある原発巣とよく反応した。このようにして得られた,膀胱癌の転移,とくにリンパ節転移と関係の深い新規の分子をMetanestineと命名した。膀胱癌組織以外におけるMetanestineの発現を検討した。PCR法やimmunoblot法による解析から、Metanestineは広い生物種で保存されており、癌組織のみならず正常組織においても広範に表現されているが、その発現量は低いことが示された。また、大腸癌,乳癌,肺癌,白血病細胞など多種類の癌細胞において正常組織と比較して有意に多く発現されていることも明らかになった。 2) 血管新生因子と尿路性器癌との関係を臨床病理学的に検討した結果,次のようなことを明らかにした。チミヂンホスホリラーゼ(TP)は腎臓癌の血管新生に関与するとともに独立した予後規定因子であった。一方,精巣腫瘍においてはTPではなくVEGFがリンパ節転移を予知する独立した因子であった。
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