研究概要 |
子宮内膜癌において性ステロイド受容体、細胞周期調節因子及び腫瘍抑制因子について解析を行うことによって、子宮内膜癌の発生機序を考察した。その結果、サイクリンE及びcdk2の発現は性周期を通して腺上皮に散在性に観察されたが、特に分泌期ではサイクリンEおよびcdk2陽性細胞の分布はp27陽性細胞の分布と相関性を示した。また、子宮内膜癌では腫瘍抑制遺伝子のRB,p53,やサイクリン、cdc2の発現異常は腫瘍の悪性化にともない段階的に異常が重積する傾向にあり、細胞周期調節因子の発現異常の検索は新しい腫瘍マーカーとしての位置づけができるものと考えられた。またサイクリンAの異常が、p53の異常を伴う傾向が見られるので、これらの蛋白質が複合体を作るのか否かを解析した結果、蛋白質を用いたサイクリンA及びp53に対するモノクローナル抗体で免疫沈降、ウエスタンブロッティング法によってサイクリンA及びp53は複合体を形成することが明らかになった。更に子宮内膜癌におけるERの発現低下を解析した結果、HpaII siteではER陰性の10例中5例がメチル化陽性、ER陽性15例中1例がメチル化陽性であり、HhaI siteではいずれもメチル化陰性であったことより、子宮内膜癌におけるERの発現低下がER promoterのメチル化と相関を示した。これらより、一部の子宮内膜癌においてERの発現がER promoterのメチル化によって負の調節を受けている可能性が示唆された。以上より、子宮内膜癌では腫瘍抑制遺伝子のRB,p53,や細胞周期調節因子であるサイクリン、cdc2の発現異常は腫瘍の悪性化にともない段階的に異常が重積する一方、性ホルモン受容体である、ERやPRの発現が低下することが子宮内膜癌の悪性化に重要であるものと考えられた。
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