研究概要 |
昨年度行ったプロゲステロン誘導遺伝子、UK-10、についてはその遺伝子解析は終了し子宮内膜での周期性変化と不妊婦人での解析による着床障害との関連が確定しつつある。本年度はさらに子宮内膜間質細胞で分化にともなって増加あるいは減少する遺伝子を解析するために、新たにPCRによるディファレンシャルディスプレイ法を試みた。培養後24時間以内での早期に分離したRNAからのcDNA解析でプロゲステロンで明らかな抑制が認められるものが見いだされた。Northem blotで確認後に遺伝子解析を行ったところ、この遺伝子はすでに血液細胞などで報告されているCD63であることが判明し、このCD63は月経周期各時期で採取された子宮内膜組織を用いたNorthem blotでも分泌期内膜での発現低下が認められた。CD63はtetra-span transmenbrane protein familyに属し、Integrinへの結合能を有し血小板活性化の指標としてあるいは細胞増殖との関連が指摘されている。子宮おけるCD63についての報告は見られず、さらに子宮内膜細胞の分化誘導によりこの遺伝子発現を抑制されることの細胞生理学的意義について検討中である。これまでの一連の研究で発見・報告してきた子宮内膜のプロゲステロン関連遺伝子は、TIMP-1,tissue TGase,UK-10,CD63などであるが、さらに最近、ステロイド受容体のある培養細胞株(Ishikawa)の中でも最もホルモン依存性が高い株の供与が得られたため、これを用いた解析を進めている。またこれら研究の過程で、子宮内膜細胞自体にプロゲステロン代謝酵素、20a-HSD、があることを見いだした。ヒトにおける20a-HSDの遺伝子配列はなお未定であったが、子宮内膜細胞でこの酵素遺伝子の全構造もほぼ同定できている。
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