めまい患者の歩行異常に関する臨床的研究を推進するために、Tactlle Sensorを用いた歩行解析システム(Fスキャン システムNitta Ltd:)を導入した。このシステムでは、歩行運動の位相関連パラメータである、立脚時間、遊脚時間、両脚支持時間の変動係数の自動解析、左右別の足圧分布曲線の重ね合わせ図および足圧中心移動軌跡の重ね合わせ図を記録することができた。(但し、後にソフトの改訂版を作成し、現在は専らこれを使用している) 健常人の開眼および閉眼下の自由歩行について検討すると、視覚入力の遮断される閉眼下歩行において変動係数の上昇や足圧中心移動軌跡の定常性の乱れが生じた。これらの正常者の全般的傾向をコントロールとして、各種めまい患者について検討すると、視覚的に観察する失調性歩行とその程度は、上記の変動係数の増大や足圧分布曲線の乱れや足圧中心移動軌跡の不規則性の増大に反映されることが判明した。末梢性疾患と中枢性疾患に分けて検討すると、特に後者においては、足圧分布曲線の前半部(体重受容時期)に不規則性の集中する傾向を認めた。また、片側性に障害を有する疾患においては、特に、閉眼歩行時に体重心の患側への移動を反映して患側肢に足圧負荷が健側に比べて高くなる傾向を認めた。このことより、視覚入力の補償が歩行運動を正常化するために重要な働きをすることが確認された。更に、歩行運動が自覚的にも、他覚的にも正常と思われる患者でも、疾患と関係のある歩行運動の非対称性が認められることも分かった。今後、更に症例を重ねて分析方法の改訂も進めながら、平衡障害と歩行異常との関係を明らかにし、疾患鑑別診断やリハビリの評価等に応用させて行きたい。尚、研究成果報告書には、研究費配分の時期に本研究に多少とも関係を有する執筆論文も加えてまとめさせて頂いた。
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