研究概要 |
平成9年度には、種々のグルタミン酸レセプターの内耳および蝸牛神経核における発現を、カナマイシンにて聾とした動物(ラット)と、コントロール動物との二群で比較した.成長の各過程(0W,2W,4W,6W,8W,10W)において、non-NMDA型であるGluRl-4とNMDA型セプターであるNMDAGluR1&2の発現を調べた.また、細胞数の比較のため免疫組織学手法にて核染色を行い、細胞数を聾動物とコントロール動物とで比較した. その結果、核染色によって調べた細胞数は、内耳および脳幹ともに聾動物で減少していた.グルタミン酸レセプターの定量的研究では、聾動物の内耳および脳幹においてGuRl,4およびNMDAGl!uR2が減少していることがわかった.逆にGluR1,3とNMDAGuRlは発現が上昇していることが明かとなった.これらの変化の機序として、内耳からの情報がなくなったことによる細胞数の減少、およびそれに伴うレセプターの減少、また残存した細胞におけるレセプターのupregulationがおこっていることが推察された. 次に、聾動物への刺激として肝細成長因子であるHGFを内耳に埋め込み型ポンプにより続注入し調べた.この結果、HGFを用いなかった聾動物に比較しHGFの投与を受けた聾動物では、、細胞数およびグルタミン酸レセプターの変化は少なく、コントロール動物に近い値が得られた,この結果は、神経系の退行変性を防ぐためには、感覚器あるいはサイトカインによる刺激が必要でえあることが実証された.
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