(1) 新しい伸展圧反応遺伝子の分離 人線維柱帯細胞に対して伸展圧を負荷した時に特異的に発現するcDNAクローンを分離した。緑内障患者における線維柱帯切除術の際に得た組織から人線維柱帯細胞を培養し、培養シャーレの底面をピストンで押す装置(私達が開発、Jpn J Ophthalmol 1996;40:289-296)によって、細胞に最大4500マイクロストレインの伸展圧を30秒周期で24時間負荷した。細胞からmRNAを抽出し、圧を負荷していない対照細胞のmRNAと引き算ハイブリダイゼーションを行い、伸展圧に反応して出現するmRNAのクローンを分離した。これをプローブとして、人眼球cDNAライブラリーからその全長配列を分離した。ノーザン・ブロッティングによって、このクローンは伸展圧特異的に合成されることを確認した。この遺伝子は未知のものであり、新しい伸展圧反応遺伝子である。現在、この成果を論文にまとめつつある。 (2) 他の眼組織由来細胞の伸展圧に対する反応 鶏の網膜ミュラー細胞に伸展圧を負荷すると、TIMP-1、TIMP-2の分泌が増加することを示した。牛網膜色素上皮細胞に伸展圧を負荷すると、TIMP-1の分泌が増加する。人強膜線維芽細胞に伸展圧を負荷すると、TIMP-1の分泌が減少することがわかった。これらの成果は、1999年の日本眼科学会総会、およびアメリカ視覚・眼科研究会議で報告する予定である。 (3) 人硝子体中のTIMP-1、TIMP-2 各種疾患における硝子体手術の際に得た硝子体液中のTIMP-1、TIMP-2濃度を酵素免疫法で測定した。その結果、増殖性疾患では、他の疾患に比べてTIMP-1のみが有意に上昇していた。この成果は、論文となっている。
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