研究概要 |
いくつかの重要な遺伝性眼疾患の原因遺伝子の変異を明らかにした. 1. Norrie病の原因遺伝子変異 Norrie病は網膜硝子体先天異常で,乳幼児期から両眼性の高度視覚障害を来たすX連鎖性遺伝病である.我が国においてはこれまでに鹿児島県で2家系の報告があるが、この研究期間中に東京都と千葉県で各1家系が見い出された.これら4家系のXp11に局在するNorrie病遺伝子についてを検索したところ、エクソン2の開始コドン変異を鹿児島の2家系で、エクソン3のコード番号95のミスセンス変異を東京都の家系で見い出した.千葉県の家系では遺伝子の重複を示唆する所見を得た. 2. Sorsby's fundus dystrophy(SFD)の原因遺伝子検索 SFDは加齢黄斑変性に類似する臨床増を示す常染色体優性遺伝病で、欧米諸国ではとみに注目を集めている.我が国では従来まったく知られていなかったが、我々は鹿児島県で2家系を発見した.欧米からの報告例と比較すると、発症年齢と眼底病変が加齢黄斑変性に一層類似することを明らかにした.原因遺伝子としてTIMP3を調べると,従来報告のないイントロン4/エキソン5のスプライシン部位の変異がみられた. 3. PAX6遺伝子変異 我々は先天眼球振盪を主徴とする常染色体優性家系を見い出した.家系中の〓患者および健常者の多数の末梢血についてマーカーDNAとの連鎖解析を行ったところ、21番染色体の短腕に当該遺伝子が局在することが判明した.そこで、候補遺伝子としてPAX6を検討したところDNA作働頷域にミスセンス変異が見い出された.PAX6のミスセンス変異は稀とされいる.しかも我々の症例の虹彩はまったく正常であることは極めて重要な知見である.
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