我々は、神経芽細胞腫の発生・進展に関与する癌抑制遺伝子の研究を進めている。当該疾患における第14番染色体長腕上の比較的頻度の高いloss of heterozygosity(LOH)の報告に着目し、同領域に関してさらに詳細な検討を行ったところ、PCR-LOHstudyによってマイクロサテライトマーカーD14S62とD14S987の間に、約1cMの染色体共通欠失領域を同定することができた。この共通欠失領域に関してさらに検討を進め、本年度は、マイクロサテライト解析により欠失を示した神経芽細胞腫症例のうちキーとなる患者より得られたサンプルに対し、欠失領域のBAC(bacterial artificialchromosome)あるいはコスミドクローンを用い、fluorescence in situhybridization(FISH)法によって欠失の確認を行った。その結果、FISHとLOH studyとの結果は完全に一致しており、第14番染色体長腕上における染色体欠失(allelicimbalance)が確認できた。さらに詳細な物理的地図を作製するため、BAC、コスミドクローンにより、共通欠失領域とその周辺領域を含めた約8cM(マイクロサテライトマーカーD14S62からD14S267の領域)についてcontigの作製を行った。今年度の成果をもとに、神経芽細胞腫発症にかかわる関連遺伝子の単離・解析をポジショナルクローニングの手法を駆使して進めている最中であり、同研究に関して継続申請を行っている。なお、本年度の研究成果は現在論文投等中である。
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