研究概要 |
本研究は、従来検出することができなかったが、偏性嫌気性菌取り扱い技術の進歩により、申請者らによって歯周ポケットから分離する事ができるようになった多くの培養の困難な、未同定の糖非分解性偏性嫌気性菌の遺伝子解析による分類学的研究、および病原性の解明を行う事を目的としていた。平成11年度においては、ひきつづき口腔各部から培養困難な糖非分解性偏性嫌気性菌を分離し、病原性に関連する性状を調べた。また、16SrDNA遺伝子型によってCryptobacterium,Mogibacteriumの新しい細菌属およびその4菌種を提案した。さらに2菌種の提案を予定している。また,これらの菌種の16SrDNA解析により、菌種特異的なPCRプライマーを設計し、口腔病変部から特異的に検出する事ができ、培養が困難なこれらの菌種の容易な検出を可能とした。一方、歯周疾患病原性を調べる目的で、これらの細菌をマウスの腹腔に注入し、免疫反応細胞を採取して、その細胞数の増減と免疫反応の様式(液性・細胞性)に関連するサイトカインIL-4とIFNγのT細胞内産生をフローサイトメーターおよびACASを用いて調べた。マウス腹腔は、奬膜上皮に囲まれ、空間として歯周ポケットに類似すると共に、遊走細胞の採取・分析が容易である利点がある。感染後直ぐに、γδT細胞の細胞内にIL-4とIFNγの産生が見られ、それぞれ液性免疫、細胞性免疫の発現に関与していると思われ、実際に免疫細胞の遊走・増加、また、血清抗体量の増加が見られた。この反応は、対照として用いた歯周疾患病原性が示唆されているPorphyromonas gingivalisの場合と同様であった。歯周ポケットで多数を占めているこれらの菌種の免疫反応が、歯周疾患の発現に大きく関与していることが示唆された。
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