研究概要 |
本研究では,歯胚・骨の各器官誘導因子(Msx1,2,BMP2,4,7)の局在をmRNAレベルでin vivo,in vitroにより,Northen blottingおよびIn situ hybridization法を用いて検討し,それを基に歯原性腫瘍の生物学的性状を検討する。本年度は遺伝子解析法の開発と歯胚分化における骨形成蛋白質(BMP)の作用とエナメル芽細胞の分化について検討した。 (1)象牙芽細胞への分化が決定されていない段階に歯乳頭細胞に対するBMPの作用を検討した。BMP部分精製法:骨タンパク質抽出液を濾過濃縮(分画分子量1万から10万)し透析後沈殿物のみを回収した。沈殿物はHeparin-SepharoseカラムとSephacryl S-200ゲル濾過クロマトグラフィーによって精製されBMP活性画分を得た。BMP溶液の調整法:4mM HCl溶液を用いてBMPを4種類の濃度(0.5,1.0,2.0,4.0μg/μl)に溶解調整した。組織培養:胎生17日のマウス第1大臼歯歯胚を摘出し,1%トリプシンを用いてエナメル上皮と歯乳頭組織を分離した。歯乳頭組織のみを0.5%アガロースと血清を含むBGJ-b培養液中(10μl)に埋入した後、各濃度のBMP溶液(2μl)を添加した。アガロースのゲル化確認後,歯乳頭とBMPを含む半固形状態のブロックをミリポアフィルター上に移しBGJ-b培養液上で6日間浮遊培養した。培養後の組織はBouin液で固定後,5μmの連続切片を作製しMallory's Alun hematoxylin染色を施し観察した。BMP濃度依存性実験の結果,BMP4.0μgと8.0μg添加群に象牙芽細胞様に伸長した細胞形態と前象牙質様基質の産生を認めた。(村田,永井ら) (2)アメロジェニン遺伝子発現とエナメル芽細胞分化の関係を検討した。エナメル芽細胞のlife spanからアメロジェニン遺伝子の発現と蛋白の局在を見ると,アメロジェニン遺伝子は,4つの発現様式をとっていることがわかった。a)基質形成開始前は胞体全体にみられる。蛋白の局在は認められない。b)基質形成初期は胞体に不均一にみられる。c)基質形成中は胞体全体にみられる。蛋白は主としてエナメル基質に認められる。d)移行期から成熟期初期にかけては胞体に不均一にみられ,次第に消失する。蛋白の局在はエナメル基質および細胞質内に強く認められる。以上の様に,エナメル芽細胞のlife spanにおけるアメロジェニン遺伝子発現は,極めて,変化に富んでいる事が示唆された。(中野,永井ら) 上記の研究遂行のため,rhBMP-2および部分精製BMPにより,異所性骨誘導の遺伝子発現を検討し、In situ hybridezation法,Northen blotting法を確立した。(長塚,完山,此内、秦ら)
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