研究課題/領域番号 |
09470392
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂井 英隆 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (80136499)
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研究分担者 |
松尾 拡 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助教授 (70238971)
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キーワード | 口腔癌 / 唾液腺腫瘍 / human papilloma virus / p53 / 細胞骨格 / doc-1 / 上皮増殖因子 |
研究概要 |
1.口腔粘膜原発扁平上皮癌におけるhuman papilloma virus (HPV) 遺伝子の局在と、p53癌抑制遺伝子の変異、ならびに癌組織の生物学的特性との関連性について。 口腔扁平上皮癌におけるp53遺伝子exon5から8までの突然変異をPCR-SSCP法にて検討した結果、扁平上皮癌47例中、p53遺伝子変異を20例(42.6%)に認めた。また、扁平上皮癌47例のうち31例(66%)にHPV16あるいは18の感染を認め、特にHPV18の感染率は従来の報告より高値を示した。これは、従来の検索がPCR法のみによりHPVを検出していたのに対し、PCR後のDNAを制限酵素で切断し、電気泳動にてHPV16あるいは18に特異的な2本のバンドを検出し、さらにSouthe rn blot法によりHPV16あるいは18であることを確認するという、詳細な検出法を用いたためであると考えられた。さらにHPV-16陽性例とp53遺伝子の点突然変異の間に有意に関連性があることが示され、HPV-16の感染がp53遺伝子の変異に関与していることが示唆された。 2.口腔扁平上皮癌細胞における細胞骨格、上皮増殖因子受容体、および新規癌抑制遺伝子doc-1に関する研究。 我々は口腔扁平上皮癌患者より樹立した、転移能の異なる二つの細胞株のクローンを有している。これらの細胞株の細胞骨格分子について検討を加え、転移能の差異がactin fiberおよびcytokeratinの発現の差異に起因している事を報告した。口腔扁平上皮癌細胞における上皮増殖因子受容体(EGF receptor)遺伝子の解析を行った結果、特定の遺伝子領域の異常が癌細胞にみられ、これらの異常が癌発生のマーカーに成る可能性を示した。口腔癌抑制遺伝子候補doc-1の蛋白レベルでの機能検索については、pDoc-1蛋白がDNA polymerase a/primaseと相互作用することで、DNA合成および細胞増殖を抑制する作用をもつ可能性が示唆されていた。 3.唾液腺原発悪性腫瘍におけるp53癌抑制遺伝子の検索。 唾液腺悪性腫瘍の代表例である腺様嚢胞癌および粘表皮癌におけるp53癌抑制遺伝子の変異についてPCR-SSCP法により検索したところ、これらの悪性腫瘍では他の臓器の悪性腫瘍と比較してp53癌抑制遺伝子の変異は極端に少ないことがわかった。しかしながら、p53癌抑制遺伝子の変異を伴う腺様嚢胞癌は予後が悪いことが示唆された。
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