研究概要 |
定量的解析用の画像データを出力できるmicro-CT装置(既設設備)を用いて,顎骨と歯牙の内部構造を観察した。 試料は有歯顎及び無歯顎の乾燥成人下顎骨及び抜去歯牙を用いた。画像データの取得には極微小焦点X線管球を装備し,解像度の高い撮影が可能なmicro-CT装置を用いた。撮影データからFiltered Back Projection法を用いた専用プログラム(科学研究費で購入)によりスライス画像データ(2D画像)を取得し,Volume Rendering法を用いて立体像(3D画像)を生成した。 μCT装置を用いることで,顎骨の内部構造を非破壊的に,任意の複数の視点から,立体的に観察することができた。また,一般の臨床で用いられるCT装置と比較すると,解像度の高い明瞭な断層像を得ることができた。下顎骨の内部構造を観察すると,有歯顎では歯槽部で歯槽を取り囲むような比較的しっかりとした骨梁が密に走行し,基底部における骨梁は疎であった。これまでの2次元的な観察では棒状に観察されるのみであった骨梁も,立体的に観察すると棒状のみでなく板状を呈するものも多数存在することが観察された。それに対し,歯槽部の吸収が進行した無歯顎では,下顎管を中心とする基底部付近に細くて不規則な骨梁が形成されている像が観察された。 歯牙については,非破壊的にエナメル質や歯髄腔の形態を立体的に観察することができた。全体を遠心舌側寄りの視点から観察した像に近遠心方向のカット面を設定するとエナメル質の断面を観察することができた。透明度を高く設定したデータと重ねることにより,全体像の中での歯髄腔の形態を透視像として観察することができた。抽出された歯髄腔形態を見ると,各咬頭へ向かう髄室角や近心頬側根の分岐根管も再現された。歯牙全体の体積に対するエナメル質,歯髄腔の占める割合を定量的に測定することができた。
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