研究概要 |
TGF-β(transforming growth factor)はそのreceptorを介して上皮-間葉のsignal伝達物質として歯の硬組織形成を行う細胞の分化増殖に関して中心的な役割を果たしているものと考えられる。そこで,TGF-βスーパーファミリー(TGF-β SF)遺伝子カスケードを検索する目的で,in situ hybridizationと免疫組織化学を用いてTGF-β SFとそのreceptorの検索を行った。材料には胎生期9から生後7日のDDYマウスの臼歯と切歯を用いた。また臼歯歯胚を用いた器官培養も行った。 BMP-2はbud stage,caps stageでは象牙芽細胞を含む中胚葉性に,bell stageではエナメル芽細胞に強く見られた。BMP-4,-7およびMsx遺伝子では,cap stageまではエナメル芽細胞に,bell stageでは中胚葉に強い局在が見られた。TGF-βはエナメル芽細胞および象牙芽細胞が分泌を行う時期に一致して強く発現した。またTGF-βおよびBMP receptorの局在と発現はそれぞれのligandが発現する時期に見られた。したがって,TGF-β SFは歯を形成する細胞の分化増殖および細胞外マトリックスの合成を制御しているものと考えられた。 成熟期エナメル芽細胞においては,smooth-endedエナメル芽細胞とruffle-endedエナメル芽細胞が交互に出現するameloblastic modulationが観察されるが,TGF-β SFに含まれるGDF ligandとそのreceptorおよびBMP receptorはこのmodulationが行われる時期のエナメル芽細胞と乳頭層に観察された。また器官培養では象牙質およびエナメル質形成はTGF-Pを加えることによって促進された。この様にTGF-β SFはエナメル芽細胞のmodulationにも深い関係を持つことも明らかになった。
|