研究概要 |
老化関連遺伝子を不活性化すると,細胞に寿命の延長や不死化が誘導されるかどうかを調べた。ヒト胎児由来線維芽細胞(WHE-7細胞)にヒトパピローマウィルス(HPV)16型のE6,E7,E6/E7遺伝子を単独あるいは併用導入して,老化関連遺伝子のp53とRb遺伝子機能をノックアウトした。遺伝子導入後クロー二ングを行い,得られたクローンの分裂寿命を調べた。その結果, 1)HPVがん遺伝子を含まないベクターのみを導入したWHE-7 neo細胞では,得られた4クローンすべてが33-43PDで寿命を迎えた。なお,対照群のWHE-7細胞は70PDで寿命となった。 2)E6遺伝子を導入したWHE-7 E6細胞では,得られた7クローン中4クローンは55-63PDで寿命を迎えたが,残りの3クローンは70PDを超え,寿命の延長が認められたもののそのうち2クローンは,最終的には72PDと78PDで寿命を迎えた。残りの1クローンは100PDを超えた現在も増殖中である。 3)E7遺伝子を導入したWHE-7 E7細胞では,得られた4クローンすべてが150PDを超え,不死化した。これらのクローンは現在も増殖中である。 4)E6とE7の両遺伝子を導入したWHE-7 E6/E7細胞では,得られた5クローン中2クローンに寿命の延長が認められたものの最終的には106PDと123PDで寿命を迎えた。しかし,残りの3クローンはいずれも220PDを超え,不死化した。 5)導入したがん遺伝子が細胞DNAに組み込まれているかどうかをPCR法で調べたところ,WHE-7 E6細胞の7クローン中3クローンで,E6遺伝子が検出されなかったが,他のすべてのクローンで導入遺伝子の存在が認められた。 6)E6,E7遺伝子の導入によって寿命の延長した細胞や不死化した細胞では,G_2/M監視機構は正常であったが,G_0/G_1監視機構の崩壊が認められた。 7)ウエスタンブロッティング法によるRbタンパクの検出により,E7遺伝子を導入したWHE-7 E7細胞や,E6/E7遺伝子を導入したWHE-7 E6/E7細胞ではRbタンパクの高リン酸化が認められた。
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