ヒト不死化細胞のテロメア伸長機構に関わる制御遺伝子を検索する目的で、自然不死化、化学がん原物質による処理、放射線照射、がん遺伝子の移入等で不死化したヒト細胞株を対象に、すべての常染色体とX染色体についてヘテロ接合性の消長(LOH)解析を行った。 1)テロメラーゼ活性陰性の不死化細胞、13株では、8番染色体の50領域中19領域(38.0%)でLOHが認められた。テロメラーゼ活性陽性の不死化細胞、9株では32領域中LOHは認められなかった。この8番染色体上のLOHの有無と代替テロメア伸長(Alternative Lengthening of Telomere : ALT)機構との間には関連が認められた。 2)Li-Fraumeni患者(MDAH087)由来の不死化細胞、5株では、6番染色体の40領域中15領域(37.5%)、17番染色体の7領域中5領域(70.4%)でLOHが認められた。これら染色体上のLOHの有無とALT機構との間には関連が認められたが、この現象はこの不死化細胞にのみ特異的であった。 3)ヒト歯肉(HGF/KK)由来の不死化細胞、4株では、7番および18番染色体に、またMDAH087由来の不死化細胞、5株では、9番染色体にそれぞれ共通のLOHを認めたが、テロメラーゼ活性の有無との関連は認められなかった。 これらのことから、ALT機構を制御する遺伝子[ALT repressor(s)(ALTR)]が8番染色体上に存在し、これらの欠失あるいは機能消失がALT機構の制御に関与している新たな可能性が示された。
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