味細胞-味神経間のシナプス形成性と味細胞の受容体発現のメカニズムを解明する目的で、以下の実験を行った。 A.dpa遺伝子導入により味細胞側に与えた変化とそれによる影響に関する研究 グルマリン感受型甘味レセプター遺伝子導入コンジェニック系N15世代を用い、鼓索神経単一線維応答の解析をさらに詳細に展開した。単一線維の内、その甘味物質に対する応答がグルマリンにより抑制されるタイプGS-type)と抑制されないタイプ(GI-type)の2群に分類され、かつグルマリンによる抑制はβ-シクロデキストリンによる舌洗浄により回復した。また、プロナーゼ舌処理ではGS-typeのGI-typeも共に甘味応答が消失し、味細胞膜の蛋白成分によりその感受性が決定されていることが示唆された。 B.神経つなぎ変えにより神経側に与えた変化とそれによる影響に関する研究 鼓索・舌咽神経つなぎ変えマウスの甘味応答とそのグルマリン感受性について検索した。鼓索神経を舌後部に再生させた例では、7本のsucrose応答線維がえられ、その内2本がグルマリン感受性を示した。一方、舌咽神経を舌前部に再生させた例では5本のsucrose応答線維はいずれもグルマリン感受性を示さなかった。これらの結果は、グルマリン感受性を発現する味細胞とGS-typeとの特異的なシナプス形成の可能性を示唆するが、さらに例数を増やし解析をすすめる必要がある。
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