味細胞-味神経のシナプスの形成性と味細胞の受容体発現のメカニズムを解明する目的で、味細胞側あるいは味神経側に人為的な変化を与えた時、一方が他方にどのような影響を与えるのかを、グルマリン感受性甘味受容体の発現性を指標に検索した。まず、グルマリン感受性甘味受容体の発現部位について、舌前部味蕾を支配する鼓索神経と舌後部味蕾を支配する舌咽神経の甘味応答のグルマリンによる抑制性を調べ、検討した。その結果、グルマリン感受性は舌咽神経支配領域にはみられず鼓索神経支配領域にのみみられることが示唆された。次に、グルマリン感受性味細胞への神経支配の特異性について検討した。鼓索神経単一線維の内、sucroseに最も強く応答するsucrose-best線維のグルマリン感受性について調べると、そのsucrose応答がグルマリンによって、コントロールの20%以下に抑制されるグループ(GS-type)とほとんど抑制されないグループ(GI-type)に分かれることが明らかになり、特異的な神経支配があることが示唆された。次に、グルマリン感受性を欠損するBALBマウスに保有系C57BLマウスのグルマリン感受性支配遺伝子を導入し、コンジェニックマウスを育成し、グルマリン感受性を発現していることを確認した後、神経線維群の分離について検討した。その結果、グルマリン感受性の発現に伴い、その発現味細胞を特異的に支配するGS-typeの線維群も発現することが明らかになり、味細胞-味神経間のシナプス形成における特異性は、味細胞側の人為的な変化に対しても維持されることが示唆された。鼓索・舌咽神経のつなぎ変えにより神経側に人為的な変化を加えた例では、十分なデータが得られず結論することは出来ないが、現在までの結果では、特異的なシナプス形成が維持される可能性を示唆するものになっている。
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