研究概要 |
Aminobisphosphonates(aminoBP)は骨吸収の亢進に対する新しい治療薬として期待されている。しかし,臨床的に炎症性の副作用が多数報告されており,筆者らはaminoBPがマウスに異常な炎症反応(ヒスタミン合成酵素の持続的誘導,顆粒球系細胞の増殖,リウマチ・モデルの悪化/骨破壊,IL-1の異常な産生など)を誘導することを発見した。本研究はaminoBPsの炎症作用のメカニズムを明らかにすることを目的とし,本年度は以下の結果を得た。 1. aminoBPsの炎症作用の解析(遠藤) (1) IL-1α.IL-1β,INFα,およびGM-CSFのmRNAを測定するためのプローベを合成し,これらのmRNAの測定が可能となり,現在aminoBPsのAHBuBP投与マウスでこれらの測定を行っている。予想したように,AHBuBPはIL-1mRNAを増加させることがわっかた。現在他のサイトカインについても検討中である。 (2) 東京大学医科学研究所より提供されたIL-1遺伝子ノックアウトマウスは順調に繁殖し,実験が進行中である.IL-1欠損マウスではaminoBPsの炎症反応はほとんど発現しないことがわかった。このことはaminoBPsの炎症作用はIL-1を介する反応であることを示す。(1)(2)の結果をもとに論文を作成する予定である。 (3) aminoBPsはLPS(エンドトキシン)の作用を増強する。歯周病の原因細菌由来のLPSの顎骨でのヒスタミン合成酵素の誘導をAHBuBPが強力に増強することを見い出した。(論文投稿中) 2. aminoBPsに反応する細胞に関する検討(菅原,遠藤) AHBuBPについて,in vitroでのマクロファージ細胞株によるIL-1産生に対する効果を現在検討している。 3. aminoBPsのターゲット細胞の同定に関する免疫組織学的検討(中村,遠藤) ヒスタミン合成酵素が誘導される細胞がaminoBPsのターゲット細胞である可能性が高い.酵素に対する抗体を用いて検討しているが,成功に至っていない。方法を模索しているが,酵素の量が極めて少ないためと思われる。 4. BP受容体の存在の可能性に関する基礎的検討(小杉,遠藤) BPsはP-C-P構造の単純な化学物質である.検討した4種類のaminoBPsはいずれも炎症反応を誘導し,non-aminoBPのCl2MBPはこれを抑制した。他のnon-aminoBPsも同様の作用を示すかどうかを調べるるため,合成する誘導体の構造を検討している。 本年度の研究でaminoBPsの炎症作用のメカニズムはIL-1の産生促進であることが示された。aminoBPsのターゲット細胞を同定することはできなかったが,non-aminoBPのCl2MBPがaminoBPsの炎症を抑制することは新たな大きな発見であり,その意味とメカニズムの解明は今後の重要かつ極めて興味ある課題である。
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