研究概要 |
Aminobisphosphonates(aminoBP)は骨吸収の亢進に対する新しい治療薬として期待されている。しかし,臨床的に炎症性の副作用が多数報告されている。筆者らはヒスタミン合成酵素(histidine decarboxylase,HDC)の研究の過程で,aminoBPがマウスに異常な炎症反応(HDCの持続的誘導,顆粒球系細胞の増殖,リウマチ・モデルの悪化/骨破壊など)を誘導することを発見した。本研究はaminoBPsの炎症作用のメカニズムを明らかにすることを目的とし,以下の結果を得た。 (1) 代表的なaminoBPのひとつであるAHBuBPを投与したマウスでは,LPSによるHDCの誘導とIL-1の産生が著しく増強され,一方,TNFの産生は抑制されることを見い出した。このIL-1産生の増強は,マクロファージの増加によることを明らかにした。(1998年免疫学会で発表)(British Journal of Pharmacology 125:735-740,1998) (2) Non-aminoBPのCl_2MBPは,LPSの炎症作用やHDC誘導作用には影響しないが,aminoBPsの炎症作用,HDC誘導作用,IL-1産生増強作用の全てを顕著に抑制することを発見した。この発見にもとづき,BPsに対する受容体の存在を想定するに至った。(1998年歯科基礎医学会で発表)(British Journal of Pharmacology,in press) (3) 歯周病の原因菌のひとつと考えられているPrevotella intermedia菌由来のLPSおよびaminoBPsはマウス顎骨にHDCを誘導することを見い出した。また,aminoBPsは,P,intermedia-LPSによる顎骨HDCの誘導を顕著に増強することも見い出した。(1998年歯科基礎医学会で発表,論文投稿中) (4) 遺伝子操作によりIL-1を産生できないマウス(IL-1-knockoutマウス,東京大学医科学研究所より提供)ではaminoBPsの炎症反応は起らないか,または,極めて弱いことを見い出した。このことはaminoBPsによる炎症反応はIL-1を介する反応であることを意味する。(1998年免疫学会で発表,論文作製準備中) 本研究でaminoBPsの炎症発現のメカニズムはIL-1の産生促進であることが示された。また,新たな発見として,non-aminoBPのC12MBPがaminoBPsの炎症をほぼ完全に抑制できることを見い出した。この発見は,aminoBPsとnon-aminoBPの併用が安全な臨床応用の方法となる可能性を示す。また,この発見の生物学的意味とメカニズムの解明は今後の重要かつ極めて興味ある課題である。
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