研究分担者 |
林 丈一郎 東京医科歯科大学, 歯学部, 日本学術振興会特別研
長澤 敏行 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (90262203)
新田 浩 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (70237767)
野口 和行 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (90218298)
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研究概要 |
感染症において、細胞内寄生細菌に対してはタイプ1のヘルパーT細胞(Th1)がマクロファージを活性化して防御し、細胞外寄生細菌に対してはタイプ2のヘルパーT細胞(Th2)が抗体産生を促進して防御するとされている。 歯周病原性細菌は基本的には細胞外寄生細菌であると思われ、マクロファージの活性化は歯周組織の破壊につながると考えられる。本研究では歯周病原性細菌の感染によってTh1が活性化し、マクロファージを活性化することによって歯周組織破壊が起こる可能性を仮定し、以下の実験を行った。 歯周病原性細菌が主としてTh1とTh2のどちらを活性化するのかを知る目的で、健常者の末梢血単核球をP.gingivalis,A.actinomycetemcomitans,B.forsythusの超音波破砕抗原と供に培養し、培養上清中に産生されるサイトカインを調べた。その結果、細菌刺激によってTh1細胞が産生するIFN-γが産生されることが明らかとなった。モノクローナル抗体を用いて細胞表面分子とサイトカインを同時に染色し、フローサイトメトリーで解析した結果、ヘルパーT細胞がIFN-γを産生することが明らかとなった。このことから、歯周病原性細菌による刺激によってTh1細胞が活性化することが示唆された。 成人性歯周炎の患者では病変部からP.gingivalis,B.forsythusが高頻度に分離され、主要な原因菌であるとされている。成人性歯周炎患者および健常者から末梢血を採取し、単核球を分離してP.gingivalis,B.forsythusとともに培養し、培養上清中のサイトカインを調べた。その結果、成人性歯周炎患者の単核球はB.forsythusに反応して健常者よりも有意に高くIFN-γを産生することが明らかとなった。このことから、歯周病患者ではB.forsythusと反応してINF-γを産生するTh1細胞が増加していることが示唆された。 これらの結果から歯周病原性細菌はTh1細胞を活性化させる働きがあり、成人性歯周炎患者でB.forsythusに特異的なTh1細胞が増加していて、歯周組織破壊を促進することが示唆された。
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